時効を援用するデメリットはあるのか
1 時効完成後に消滅時効を援用するデメリットは特にないといえます
結論から申し上げますと、かつて債務の返済を滞納してしまったなどの理由があり、弁済期から長期間が経過している場合において、消滅時効を援用することのデメリットはないといえます。
少なくとも、法律面においては、弁済を免れることができるだけであり、ほかの義務を負わされるなどのペナルティもありません。
もっとも、消滅時効が完成していたとしても、消滅時効の援用の意思を表示しない限り債務が消滅することはありませんので、正確に消滅時効の援用を行う必要があります。
また、消滅時効が完成していると思っていたものの、実際には消滅時効が完成していない状態で消滅時効の援用をしてしまうと、債権者側が消滅時効の完成が近いことに気づいてしまい、逆に消滅時効の更新をされてしまう可能性もあります。
以下、詳しく説明します。
2 消滅時効の援用の意思表示
消滅時効の援用をする際は、通常、内容証明郵便を用います。
これは、消滅時効の援用の意思表示をした旨を、第三者が証明できるようにすることによって、後になって消滅時効の援用の事実の存在を争われることを防止するためです。
逆に言いますと、第三者が証明できない方法(例えば、口頭で消滅時効を援用することを伝える)で消滅時効の援用をした場合、後でトラブルになる可能性が残ってしまいます。
また、内容証明郵便に記載する文言にも注意を払う必要があります。
万一、後日訴訟等で争いになった場合に、裁判官が当該内容証明郵便の記載内容を見て、消滅時効の援用の意思表示がなされていることを認定できる文言で記載する必要があります。
3 実際には消滅時効が完成していない可能性がある場合
借金の返済を滞納してしまってから長期間が経過しているものの、最後の支払いがいつであったか(正確には弁済期がいつであったか)についての記憶が曖昧であるというケースがあります。
このような場合には、一旦消滅時効の援用含め、債権者とコンタクトをすることを保留することもあります。
そして、債権者に関する資料や、銀行の振込・引き落とし履歴などを調査し、確実に消滅時効が完成しているといえる時期まで待ってから消滅時効の援用をすることもあります。
このようにしないと、もし消滅時効の援用をする旨の内容証明郵便を送った段階では消滅時効が完成していなかったら、逆に債権者側は訴訟を提起し、消滅時効の完成猶予という対応をとるとともに、確定判決の取得または裁判上の和解をすることで、消滅時効の更新をする可能性があります。